|
天理は歴史の町、神代の昔からさまざまな物語が息づいている。西名阪天理インター入口(大阪方面行)左側にある、櫟本町の在原神社もその一つ。奥に小さな社殿があるだけの町中の公園のような敷地だが、その一角に『伊勢物語』の舞台として描かれた井戸がある。ご存知、幼なじみの男女の恋物語に出てくる、あの有名な「筒井戸」である。「筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざる間に」と男が歌えば、「くらべこし降り分け髪も肩を過ぎぬ君ならずして誰かあぐべき」と女が返歌を。
この後、二人は夫婦となるが、男は行商の旅先で愛人が出来た。それでも妻である女は、少しも嫌な顔をせずに男の道中の無事を祈って独り帰りを待つ。その妻の姿を知った男は、筒井筒の昔の思いがよみがえり、もはや愛人のもとへは行かなくなった。
――というお話。こんな純粋な"愛情世界"が現代にもあるだろうか…。なんて言ったら、世の女性の総スカンを食らうかな!? そうでもない??
『伊勢物語』は平安朝を代表する色男、在原業平(ありわらの・なりひら)の一代記という構成をとっているが、筒井筒の話のようなエピソードがあったかどうかは知らない。
それはともかくとして3,733人斬りと言われる在平業平の色男ぶりに、女ならたまには…おっと失礼! ……純な恋愛物語に浸る思いで、『伊勢物語』を手に一度はこの井戸を訪れてみてはいかかがな?「それで、どうなるの?」と聞かれても……何も答えられないが、少なくとも日本の古典に親しむ機会にはなるでしょ。
by.Mori
【写真】訪ねれば、驚くほど小じんまりとした佇まい。歴史のロマン…
(在原神社と筒井戸)
|