00.01.24.




酒学入門


穂積忠彦 著


発行:毎日新聞社



昭和52年3月5日
 初版発行 

定価:980円(当時)

またまた古い本で恐縮だけれど、呑兵衛の私にとっては、聖書…
ここに挙げて敬意を表する次第

 「無くて七癖」などというけれど、(へき)は自分では、なかなか気が付かない。酒癖もそう。ハイになるのは可愛いもので、怒る、絡む、理屈っぽくなる、泣く…、実にいろんな人がいる。あたしゃ、どんな飲み方をしてるんだろう…。自慢じゃないけど、翌日に記憶が無い! という恐怖体験はほとんどないから、まずは大丈夫だと思うけど、自分の顔が自分では見えないのと同じで、そう自信があるわけでもない(誰か、一度聞かせて。でも聴くのも怖いよな〜)。

 酒癖のなかでも嬉しくない御仁が、説教を垂れる、“ヨイショ”を求める…。ご当人は楽しい酒だろうけれど、付き合う方は、ちっとも楽しくない。第一悪酔いのもと。それでも一昔前の勤め人は、「はい、お説ごもっとも」とつきあったもの。先輩は立てる、人の話は聞かせてもらう―それも人生修行!

  その点、最近の若い人たちは「アフター5は別」と割り切っていて、うらやましいような腹立たしいような。過日、流通業に勤める友人と飲みながらこの話題になったら、「歓送迎会、忘年会に参加してくれるなら、立派ですよー」と羨ましがられてしまった。そういう彼の頭が、限りなく薄ーくなってるのを横目にみながら、お互いの酒歴を振り返った。
  はや、私も立派に中年の仲間入り…、最近とんと若い人たちからお誘いがかからないのは当たり前か。彼らも彼らで、楽しくやりたいのだろうと、来し方を振り返ってみたりして…。

 といえば、 本に頼りたがるのも私のヘキ。最初に買ったのは、楽器の本だったか。上手くなりたいと思うと、先生がいないから楽器店の書棚に。高校のころ、病を得て、大和の寺社を巡ろうと思い立つと本屋へ。『古寺巡礼』などなど、まずは知識を得ないと落ち着かない。
  買ったケーキがまずかったからと、次の日曜日に本屋に行って『ケーキを作ろう』なる書物を購入したのは、勤め始めた年。翌週の日曜日には百貨店で型と泡だて器と…と購入した。それから…。

 数え上げればキリがない。事前に情報をもってないと落ち着かないというのがヘキ。旅に出る前にガイドブックを買い込んで、フムフムと読み込んで行った気になったりして…。確かに、まず自分の目で見て、驚いたり、カンシンしたりという経験は乏しくなる。でもその分、見るべき部分をしっかり見ることができ、さらに次の?につなげることができる。予習は大事(と自己弁護しておこう)。

 …?今回も大脱線(モウシワケない!)。本書も私の癖がヘキで、酒を飲み始めたころにGET!
「酒とはなんじゃろ?」と購入した一冊。いわば、ヘキの産物。だけど、有り難〜い一冊。
  著者は、東京大学農学部農芸化学科卒、大蔵省の東京財務局鑑定部の技官、国税庁醸造試験所を経て、協和発酵取締役工場長、富士発酵工業専務取締役…。つまり、酒の鑑定、製造、開発に携わってきた人(もちろん相当の飲兵衛とみた)。

  しかしながら、本書の内容は、いわば酒の文化史 。記紀神話にまで遡って、「サケ」の語源、口噛み酒に始まる酒造りの歴史、飲み方の歴史、さらにはアルコール中毒(依存症)の怖さから酒の栄養学、二日酔いの生理学、利き酒、酒と料理、酒の器…と、酒と四つに組んで付き合ってみようと思う人には、楽しいナルホド情報がいっぱい。酒と付き合い始めた最初の時期に、この本と出会えた事を今では本当にラッキーだったと思っている。

 中に、いまでも忘れない一文が引用されている。孫引きになるし、少し長いが挙げておきたい。

アル中の父から息子への手紙
 お父さんは酒は悪魔だから決してそれに近づくななどとヤボをいうつもりはない。だが人はどうしてアル中になるかだけは知っておいて欲しい。酒を飲みすぎてアル中になったと思っている人がいる。
  しかし、そうではないのだ。本当はそれ以前に何か問題があって、そのために飲みすぎたのだ。アルコールは精神的な支柱というか、一種の松葉杖みたいなものになってくれる。たとえば弱さ、恐れ、心配など、いわば、心の足の骨折というようなものがあって、そのわけのわからない、ぼんやりとした影がどこまでもついてきて離れないときにアルコールは力になってくれる。いやなことに立ち向かわなければならないときに酒の力を借りると一種の勇気のようなものがわくので酒を飲むようになった人も多い。 しかし、その“えせ”勇気に頼れば頼るほど真の勇気は乏しくなる。たとえば人との交際をスムーズにするために飲むとすれば、しらふのときはいっそう、ぎこちなく、自意識過剰で、しゃべれなくなるだけだ。退屈や淋しさをまぎらわすために飲めば、酒がそばにいないとますます淋しく手持ち無沙汰を感じる。もし、お前が人並みならば初めて酒を飲むときの経験は愉快なものだ。だが、これだけは覚えておいてくれ。お前が盃を上げるとき、自分は大人で、なんでも自分で責任が持てると考えたとしても、お前が手にしているものはどっちみち、脳の中枢機能を低下させる麻薬のようなものであることに変わりはないということを。(『リーダーズダイジェスト』1967年1月号)


 ともあれ、ちょっと古いけど、酒は呑むべし呑まれるべからず…。楽しく、嬉しく、長〜くつきあいたいねぇ。お酒、ダイスキ!

Presented by Takafumi-labo.
since 2000.01.20. (C)All Copyright Takafumi-labo.
horoyoi@tenri-iexpress.com