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表紙の見返しにいきなり、ヒトの脳は快楽脳であると、60ポイントほどの大きさの太ゴチックで朱書されてあった。
しかもその下には、■なぜ、ヒトは口説き、キスをするか ■なぜ、ヒトには発情期がないか ■なぜ、ヒトのオーガズムは多様なのか ■なぜ、エストロゲンは性欲の根源か…などなど、気を引くフレーズが15も箇条書きに提示されている。
これを読んだだけで内気でマジメな青少年などは、ついふらふらと手に取り、レジに向かってしまいそうだ(買ったばかりの国語辞典で、○○や××を引いてはドキドキしていた頃の私なら、多分これでイチコロだったかもしれない)。
しかし、私は霊長類の研究で高名な本書の著者・大島教授を知っている。しかも、教授は幾度か天理にもお見えになっているから、間近にご尊顔を拝し、ご高説を拝聴した記憶もある。
書店の棚で本書のタイトルを見つけ、著者名を目にとめたその時から、「あの先生が、決してエッチな本などお書きになるハズがない」と確信し、「学問的見地から、性の深遠を解き明かしてくださった書物に違いない」との期待を胸に手を伸ばした(という高尚な動機でもなかったよーな?)次第。
さて、本書は「第1章 サルの性、ヒトの性」「第2章 男のSEX、女のSEX」「第3章 ヒトがヒトを愛する」「第4章 ヒトがヒトを欲しがる理由」からなっている。
まず、この タイトルのつけ方がうまい、好奇心に火をつける、○○心をそそる、きっと売れる…。これらは多分、教授がおつけになったのではなく、同文書院の担当編集者が「先生、こっちの方が読まれますよー」とか何とか言って、パラパラと付け直したのではないか(と思えてしかたがない)。
しかしながら本書は、同文書院の〈快楽脳叢書シリーズ〉 の中の1冊。頭、脳にこだわってみようというわけで、本書も最初から最後までとことん、脳と性とのかかわりを解き明かしている。読み返せば確かに、本書の副題には「ちょっとまじめに性の謎」とあるから、“看板に偽りなし”といったところだろう(ちょっとぐらい偽りがあってもよかったけど…)。
教授によれば、身体構造から性行動まで、ヒトとサルの違いは直立2足歩行を獲得したか否か、それによって言葉、そして大脳が発達したか否かによるという。その辺のところが、さまざまな例を挙げて繰り返し提示される。
そして、ヒトの性は下半身や性器だけでなく、大脳の働きに発し、大脳が快感を感じ取る、きわめて文化的(?)、全人的な営みだと力説する。
たとえば恋する女性がなぜ美しくなるのか?
―異性への関心がつちかわれるのが大脳新皮質前頭連合野であり、恋の快感が放散されるのも新皮質。大脳新皮質は恋の喜びを感知すると、その幸福感を食欲、性欲、内臓系を司る大脳辺縁系と、ホルモン系の司令部である視床下部に伝える。
―一方、視床下部は脳下垂体に命令を発して、さまざまな刺激ホルモンを分泌する。プロラクチンは皮膚の新陳代謝をさかんにし、エストロゲンは肌を上気させる。こうして恋する乙女は美しくなる。
…と、こう書かれると、「そーかなー」「なるほー」と思う。で、教授は元気に先を続ける。
―性行為だけで満足するのは、大脳辺縁系の素朴(原始的?)な心。肝心の大脳新皮質系の心を満たすにはそれだけでは駄目で、相手の人格を認め合う、互いをつなぐ心の糸が必要なのだ。
―単なる肌の触れ合いだけでなく、言葉、文字、まなざしなどによる全人格的なコミュニケーションが要求される。
―愛の満足感は高等な快感を呼び、ふたたび大脳新皮質系に跳ね帰って、内臓系やホルモン系を活性化させ、美しさを醸し出させるのである。
そう、目と目を見詰め合って、「いとおしい」とか、「可愛いなー」とか、「食べてしまいたい」と思わない場合は、ナニガ何してはいけないと教授はおっしゃる。
ヒトの性は、極めて精神的なものであり、精神的充足が大きなカイカンを生むのだと…。うーん、わかる分かる(ホント?)
深い! 脳(心)と身体と性と…。誰に教えられたわけでなく、多分みーんなナニゲに何しているだろうけれど、それぞれの身体の中では神経伝達物質が走り回り、さまざまなホルモンが複雑、絶妙に働いているのだ…。そーれから、心と体は別だ―と思っても、やはりフクザツーに絡みあっているんだよね、人間だもの。普段、気にとめてないこと、不思議に思っていないことでも、こうして解きほぐしてもらうと、なんだか有り難いような…、学問ってするもんだねぇ。
そして思ったのは、神様って、すごいものを創られたなーということ。あらめて妙にカンシン。
やはり「心」って大事だよねぇ。でも、でも結構面白かったなぁ。あなたも、一度読んでみる?
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