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発行:講談社α文庫 1997年07月20日 第1刷発行 定価:本体680円 |
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航空事故が起こる度に、ヒューマンエラーが取り沙汰される。つまり、機長のミス。そう片付けてしまった方が、航空会社も航空機メーカーも、責めを負わずにすむ。死人に口無し・・。人間にミスはつき物・・。コンピューターは、正しいってかぁ・・・・。 |
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前回に続いて、暗い話で申し訳ない。 11月1日、ちょっと肌寒い朝。早起きするつもりが寝過ごして、自虐的な気分でコーヒーをすすりながらテレビのスイッチを入れたら、シンガポール航空機の事故のニュースが飛び出してきた。紅葉を迎えようというのに、南国の台北は台風の最中。10月31日23:18(日本時間1日00:18)ごろ、ロサンゼルス行きのシンガポール航空B747-400が、離陸できずに爆発、炎上したという。 ふくんでいたコーヒーがいきなり、苦く舌を焼いた。 帰宅後、夕刊で続報を追うと、死者70、不明7、負傷102人-------。 シンガポール航空は「世界一安全」だといわれてきた。他社が機材を20〜25年も酷使する中、ここは平均5年で更新。常に最新の機材を飛ばし続けて、1947年の創立以来、事故らしい事故を起こしていない。しかも、事故を起こしたのはハイテク最新機材の-400。産経新聞社会面は「『嵐の中なぜ飛んだ』詰め寄る乗客家族ら」と見出しをつけた。 国際線。運休した場合の乗客の宿泊費など経済的損失をあげる人もいよう。国内線は確かに、運休していたという。キャプテンの傲慢、判断ミスと言う人もでよう。でも、「本当にそれだけだろうか」。今回もまた、いつもの自問自答が胸のうちを駆け巡った。 思い気分で書棚を見回し、また本書を手にとった。 副題に「離陸から着陸までのチェックリスト」とあるように、長年、飛びつづけたラインのキャプテンが、飛行準備から地上滑走=タクシー、離陸=テイクオフ、上昇飛行=クライム、巡航飛行=クルージング、降下飛行=ディセント、侵入=アプローチ、進入中止=ミスト・アプローチ、着陸=ランディングと、コクピット内の動きを克明に追いながら、パイロットなる人種が何をしているか、その“舞台裏”を、キャビンしか知らない私たちに教えてくれる。 と同時に燃料や機材の点検整備、航空路のしくみ、空のルール、ガス欠や故障などへの対処、着地時の逆噴射などなど、ハード・ソフトの両面にわたって溢れるほどの情報が盛り込まれている。 その中に「嵐の日には鳥は飛ばない」との一文を見出した。 著者は1921〜1994。旧海軍に飛行練習生として入り、特攻を命じられるが数日後に終戦。わが国のパイロットが米国により翼をもぎとられた時期を越えて、全日空の前身・極東航空に入社。夜間郵便定期便のパイロットなどを経て、ANA旅客機の機長。旧海軍時代の練習機、偵察機なども含めると、退職までに25機種に搭乗。飛行回数は25,000回にのぼるという。 空を知る男ほど、空の怖さを知っている----。本書の中に記されている、これでもか、これでもかというほどの安全へのこだわりに、あらためてそう思った。 と、ふと思う。シンガポール・エアのキャプテンは何歳だったのだろう? 総飛行時間は? 離着陸回数は? 風は一定ではない。必ず息をつぐ。キャプテンは間違いなく、その息のつぎめにスロットルレバーを操作したはずだ。翼と機体下部に抱いた燃料だけで100t! もちろん、自分の命もかかっている。考えもなく、Go!!を決断したはずはない---と、そう信じたい。 昨夜の事故で亡くなられた方々と、炎上したB747-400の機材のうえに祈りを捧げたい。-400が運んできた、あまたの人々の旅の喜びに思いを致して。 |
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