00.01.10.


「臓器提供意思表示カード」         
「脳死」ドナーカード
持つべきか 持たざるべきか


 運び込まれた病院で
  あなたと家族に何が起こる?



発行:さいろ社
sairo@osk2.3web.ne.jp

1999年10月1日初版
1999年11月1日第2刷

定価:1000円+税

「知らない」ことが一番、危ないんだと痛感した。  脳死・臓器提供は他人事でなく、明日にも私自身が直面する事態かもしれない…

1999年2月28日、私の内側で脳死や臓器移植を巡る思いが大きく変わった。そう、臓器移植法成立後初の“脳死体”から臓器の摘出が行われた日。テレビ中継を通して、ビニル袋に詰められ、(我が家がキャンプに持っていくのと同じような型・色の)クーラーボックスに入れられた臓器が、防災ヘリやチャータージェット機で飛んでいくのを見ながら、何か割り切れない思いが膨らんだ。

「なぜドナーとなった女性は、救急車で病院まで1時間弱もかかったのか」「彼女は、きちんとした救命医療を施してもらえたのか」 「脳死判定が出る前から待機するヘリ、報道陣…。死が確定したかのように、既成の事実のように動き出しているシステム、一体これは何なんだ」「この人たちは、彼女の死を期待し、待ち望んでさえいるのではないか」…。
  いろんな疑問や憤りにさえ似た感情が渦巻き、それまで「提供したい人がいて、たすかる命があれば、それはそれでいいかもしれないな」と、“消極的容認”に近かった私の思いは、クルリと変わった。ドナーが、40歳代という私と同じ世代だから、なおさらリアルに感じたのかもしれないが。
 新聞の書評欄でこの本を目にして、すぐに電話をかけたのは、そんな思いからだったと思う。

「目からウロコ」が落ちると言う。この本を閉じた時の思いは、月並みかもしれないが、まさにそんな感じだった。それまで、胸の奥でモヤモヤしていた幾つかがクッキリと見えたように感じる一方で、暗澹たる思いと無数の疑問、そして自分自身に対する情けないような気分が、ヘドロから上がるメタンガスのようにさらにブクブクと心の面に浮かんできた。

 脳死臓器移植について、自分なりに考えているつもりでいながら、まったく見落としていたのが救急医療の問題。脳死となる多くは交通事故や脳卒中といった脳の病気だから、いずれも突発的に起こる。救急車→救急病院となるが、高知の例のように1時間もかかったり、あるいは受診を拒否されたり、さらに運び込まれた「救急病院」が看板だけのヒドイ施設だったらどうなる。また、「救命救急センター」に運ばれたとしても、担当するのが駆け出しの未熟な医師だったら…。本書では、日本の救急医療を巡る状況の惨さを、まず第1章に据えている。

 そして、あの日以来心にかかっていた、「まだたすかるかもしれないのに、臓器提供を前提に早々に救命医療を切り上げられるのでは…」との疑念が、さらに大きく膨らんだ。あの和田移植(※)以降も、脳死や臓器提供を巡る事件は起きていたようなのだ。それもまた、知らなかった…。

ほかにも知らなかった事、気づいていなかった事がいっぱいあった。それらを事実と受け取るかどうかは、それぞれがまず一読して考えてみて欲しいと思う。
  私自身は今後、救急救命医療(制度、実態、医師養成…)について、調べたいと思っている。地べたを1時間余り走って病院に行き、臓器になればヘリで飛ぶ日本。かつてテレビで見た、諸外国の充実した救急体制に関する報道が心にかかっているから。

※1968年に札幌医科大学で行われた日本初の心臓移植。脳死判定のあいまいさ、患者の病状の適応性、情報の公開など多くの問題を残した。 和田教授は後に殺人容疑で告発された。


「脳死」ドナーカード  持つべきか 持たざるべきか
【序章】 あなたが倒れるとき
【第1章】都会の夜は無医村……「救急」であなたに何が起こる?
【第2章】愛する人との別れ方……「承諾」であなたに何が起こる?
【第3章】消えない脳波……「判定」であなたに何が起こる?
【第4章】密室の情報操作……「報道」であなたに何が起こる?

【第5章】語られない“愛”の素顔……「臓器」はいかに使われるか
【第6章】触れられたくない記憶……「過去」のドナーに何が起きた?
《執筆陣》
近藤誠氏(慶応大学医学部放射線科)、伊豆百合子(ジャーナリスト)、岡本隆吉(知る権利ネットワーク関西)、近藤孝(救急専門医・脳神経外科)、勝村久司(医療情報の公開・開示を求める市民の会)、山口研一郎(脳神経外科医)、橋岡まり子(看護教員)、鶴田弘之(河合塾講師)ほか

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