00.06.29.



飛行機はなぜ飛ぶか
空気力学の眼より

近藤次郎 著


発行:講談社
 (BLUE BACKS)

1975年1月30日第1刷発行
1990年2月5日第27刷発行

定価:680円

“金属の塊”がなんで飛べんねん!? 乗っている時には考えないのに、着陸間近のジャンボジェットの巨体を、真下から間近に仰ぎ見た時にそう思った

 空の向こうに星明りのようだった着陸灯が見ている間に近づき、頭上を圧するように巨体が滑る。一瞬遅れて頭上に覆い被さってくる轟音の中で頭を巡らせば、滑走路を車輪が叩き、黒煙が噴き上がる。そして、エンジンをリバースする轟音が辺りに満ちる。

 着陸する旅客機を間近に、真下から見ることができる空港は、国内にそう多くはない(教えないよー! でもファンなら知ってるね。名古屋と…)。学生時分から、幾度、ここに足を運んだろう。いつも、誰かしら他に人がいる。中にはラジオで航空機と管制塔との交信を傍受しながら、来る飛行機を待つ人も。「みんな好きだなぁ」と、そう思う。そう思う私自身、日がな一日眺めていても飽きない。

 南西諸島の生まれなのに、からきし船がだめ。小学校6年の時の修学旅行が、隣の島。東シナ海と太平洋のあわい、わずか数時間で立派に船酔い。その夏、初めて奈良までの長旅。往路は鹿児島まで(一晩!)が船で、後は初めての列車の旅。アドレナリンが噴いて酔わなかった。けれど疲れきった復路(だってかの大阪万博にも行って)、大阪港から36時間!。ほとんど、床から頭が上がらなかった。吐いて吐き尽くして、黄水も尽き、やがて何も出なくなって、このまま死んでしまいたいと思った。「なんで島に生まれたのだろう!?」

 そんな船旅のことなど夢想だにせず、天理高校に進学。そして3年間、夏・冬・春休みと年に3度は、日本列島の半分ほどを船旅。その度に、船底で洗面器を抱きながら、同じ呪詛を繰り返した。大阪湾(or神戸港)から紀伊水道まではいい、四国沖の太平洋に出た途端、船は正直に揺れ始める(と、これを書きながら、いきなり酔い始めた。ウップ;;)。

 大学に入って、“スカイメイト”なるものがあることを知った。空席があれば、半額でYS11に乗せてくれる! 以来、帰郷は空の旅になった。友人によく「怖くない?」と聞かれる。「落ちたら、落ちた時やん!」と私。相手は分かったような、分からないような顔をする。でも、これ本音。27時間(船も速くなったからね)、船酔いと格闘するくらいなら、私は博打を打つ。

 だから、飛行機が無条件に好き(好き嫌いに、あまり条件はないとも思うが)。そして、おかしなもので飛行機では酔わない。エアポケットで数100メートル落ちようが、乱気流に揉まれて周囲の人が反吐を吐いていようが、いっこうに構わない。落ちたら、落ちたとき。それに、揺れが10時間以上も続くことはない!

 と、そう自らに言い聞かせつつ、心のどこかに不安があったのかもしれない(鉄の塊が、空を飛ぶわけないやん)。書棚には、航空機に関する書物が、やたら多い。「飛行機がなぜ飛ぶか」「現代の航空機は、いかに安全か」……そんなことを、知りたかったのかもしれない。

 本書の初版は1975年。しかし、内容は十分、いまに通用する。だって、最初に登場する旅客機がかのB747ジャンボジェット(ジャンボの商用航路就航は1970年だから、もう30年間も旅客機の王者を独占し続けている)。世界の空は、そう大きくは変わっていない。

 しかも、15年間で27刷! これは内容の確かさと、分かりやすさを示していると思う。いわばベストセラー。読む価値はあると思う。私自身、理解力がないのか、一読して分かった気になりながら、もう幾度読み返したことか。おもしろいよ


 と、これで終わっては、あまりに愛想がない(私事が多すぎた)。 あと少し、本書を紹介。

――列車や自動車には車(車輪)があり、船には推進のためのスクリューがある(ウップ)。もし故障すれば、たんに止まったり、静かに海面に浮かんでいればよい。だが飛行機はそうはいかない。鳥は飛ぶことをやめれば落ちる。飛行機もそうである。飛行機が支えのない空中にあるのは、それが飛んでいるからである。
――難しい原理をごまかしてわかったような気分にしようというのではない。あくまでも現象に忠実に、かつ物理的に正確に、空気力学を説こうとしているのである。この本は物理に興味を持って勉強している若い人々にも、多少は読みごたえのあるものとした。
――もしこの本を読んで、それでも飛行機がなぜ飛ぶかが納得できなかったら、その責任は読者の側にあるのではなくて著者にある。
――この本は、飛行機の設計者になろうとする人ではなく、それを利用して旅をする大ぜいの人を対象として書いた。したがって中に出てくる飛行機は主として、我々がたんに乗客として利用するものに限定した。――「はしがき」から

 たいした自信ではある。 著者は1917年滋賀県生まれ。京大理学部数学科卒、東大工学部航空学科に学ぶ。応用数学および空気力学専攻。国産唯一の旅客機YS11の計画に参加。国立公害研究所長を経て、東大名誉教授、日本学術会議議長を歴任。


 ところで、あのジャンボ、何トンあると思います? 本書によれば350トン以上! 何で飛べるんでしょうねぇ!あんな重いもんが!?……そう思う人は、本書を読んでいみて。テェシタモンダワってか?

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