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 紳士の美学
 
板坂 元 著



発行:PHP研究所

1995年9月7日
 第1版第1刷発行 1995年11月10日
 第1版第2刷発行

定価:1,400円

「紳士」に「美学」と、憧れのキーワードが重なったら読んでみるしかない。
もっとも、“憧れ”と自覚しているわけで、ないものねだり―だけどね。

 尊敬する大先輩から、見返しに「学兄へ」との身に余る献辞を記して頂戴した一冊。
  先輩は大柄で一見がさつそうに見えながら、華道、書道をたしなみ(それも相当の腕前)、衣・食ともセンスがいい。料理もよくするとか。そのうえ締めるところは締めながら金離れがよく、他者に細かな気遣い、気配りのできる人。その上、もう還暦を過ぎようかという年配ながら、好奇心が強く、常に新しい情報を入手して、仕事の上にも生かしている。
 ここまで書くと、「そんな人いるんかいな?」との声が聞こえてきそうだが、これ本当。もっとも、かなりエネルギッシュな人だから、部下として働く身や、同僚にとってはかなり煙たい存在かもしれないが……。そうであったとしても、私が知る数少ない紳士と呼べるお一人には違いないと思う。

 本書は、「第一章 意気に感じる」「第二章 ひとりいくなり」「第三章 風流というか 超然というか」「第四章 君は いつも美しい」の4つの章から成る。

 第一章の冒頭は「伊達男の資格」
  曰く、ダンディの条件はまず「別れ際がりっぱなこと」。mm……別れ際、いつも未練たらしく振り返る私は、第一段階で不合格。
 次に「ダンディーは威張らない。自慢話をしない」=「ちょっと役職に就いたからと部下に苦労話をしたり、威張ったりする奴がいる。あるいは出身学校がちょっと良いと鼻にかける奴。少しくらい頭が良かったり、仕事ができたりするのは、職業人では最低限の資格だろう。それを見せびらかすのはダンディー道の失格者だ」と手厳しい。出身学校がいいわけではないから、その辺は大丈夫?……だが、他はどれも危ないなーと反省……。板前が料理がうまくて当たり前、碁打ちが碁が強いのも当たり前――というのももっともだしなー。

 それから、もっと厳しいのが「学者が知らないと平気で言えるようになったら一人前」と。これは大丈夫だと変に喜びかけたが、当方ガクシャ様ではなかった。しかも、「『知らない』と平気で言えるためには、それだけの学識と自信が必要」 「それを『人に笑われたくない』と知ったかぶりをするのは、まだ半人前だ」……と指摘されると、“知ったかぶり”とハッタリだけで生きてきたような当方としては、まさに身の縮む思い。「分かりません」はタイミングが難しいもんなぁ。

 とどめは、仲間の足を引っ張る奴、陰で仲間の失敗や欠点をあげつらう奴……。傍で聞いてると決して格好いいもんじゃないけど、酒の肴にはうまい…。あー、当方、品性間違いなく下劣。ダンディー道は、遥か遠くのシルクロード。道遠く道険しのようだ…。

 プロフィールによると、著者は大正11年(1922年)中国南京生まれ。東京大学文学部国文学科卒。武蔵高校、成城大学、ケンブリッジ大学を経て、ハーバード大学に勤務、日本文学・日本語を講じ、現在は創価女子短期大学教授、副学長と、キラ星のようなご経歴。先に引用したフレーズも、この位のキャリアがないと様にならないもんね(でも、出身学校がちょっと良いと鼻にかけるという懸念はなどないのだろうなぁ―と、私どこまでも下劣mmmm)。

 多数ある著書の中の一冊が『考える技術/書く技術』(講談社刊)とあるのを見て、あ〜あの本を書いた人かと、思い出した。随分以前にお世話になった。なかなか面白い本だったけれど、本書にもその豊富な学識が散りばめられている。
「紳士」のお墨付き付きで登場するのは、古今東西の思想家、学者、軍人、政治家、作家、映画の登場人物……。さらにクラシック音楽から文芸作品、ゴルフ、アメリカンフットボール、料理、ワイン、書籍に関する話題から、ハーバードやケンブリッジ大学の学生気質、チップに日本文学……と、まぁこれだけいろいろ知ってるものだと感心する。博識というのも、ダンディー道の条件なのかもしれないね。


 再読して、先輩はなぜこの本をくださったのだろうと、ついついと考えてしまった。
「少しは、いい男になれ」ということなのかなー? それとも「幅広く、世の中を知れ」?
 それとも……。ただ、せっかくくださったのだから、少しは磨いてみるかな自分を(えっ、もう間に合わないって? そうかもしれないなー)。
 

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